雑感 20220311

戦後77年

 今年は昭和20年(1945)の敗戦から77年になる。この間、日本は戦争を知らずに過ごして来られた。こんな国は世界でも稀だろう。自分は本当にいい時代に生れたと思う。

 翻って昭和20年以前の77年間を見ると、ちょうど明治元年(1868)からになる。ちなみに慶応4年の9月(太陽暦10月)に改元している。この77年間は、幕末のロシアとの北方領土での戦闘、英仏蘭米との下関戦争という対外国戦争から、戊辰戦争から士族の反乱、西南戦争という内戦を経て、征台の役、日清戦争日露戦争第一次世界大戦という対外大戦争が10年を置かずに続いた。まさに戦争の世紀である。その中で日本は戦勝国であり続けた。

 明治になって徴兵制によって国民皆兵の軍隊ができた。初めは、旧武士階級、士族の将官の下、農民の二男三男が兵卒となって戦っていたのだろう。この、戦争の連続した時代において、国軍(皇軍)は日本の最重要な組織だった。が、重要に過ぎて、政治に関与する面が大きくなりすぎた。結果は国策を誤って国家滅亡の寸前にまで至った。

 

 この二つの77年間は、どちらも日本の劇的な変化の時代だった。天皇の地位、社会経済制度、教育内容、家族のあり方が前の時代から過激に転換された。

 77年前、日本は辛うじて生き延びたが、厳粛な反省の下、日本は戦わない国家として、以前の戦争の時代と同じ長さを過ごしてきた。その間、日本人の心性は、強国たる誇りから経済大国の驕慢に変わってしまったように見えたが、それも破れて、今はなんだか、科学技術に長じているだけの、儚い平和の夢に浸っている国家(国民)に成り果てたような感じだ。いや、素晴らしい人材は常に豊富なのだろうが。

 

 さて、明治維新の77年前は1790年頃になる。寛政の改革の頃であるが、ヨーロッパでは、フランス革命が起きていた。自由と平等の時代の幕開けだった。偶然だろうが、77年周期があるような気がしてくる。

 

 ちなみに、共産主義の歴史を見ると、ソビエト連邦の崩壊が今から31年前の平成3年(1991)末。遡って同連邦の成立が大正11年(1922)末。コミンテルンによって中国共産党が設立されたのが、大正10年(1921)。ロシア革命大正6年(1917)。「資本論第1部」出版が慶応3年(1867)、明治維新の頃。「共産党宣言」はさらにその20年前、嘉永元年(1848)だ。

 

 

ウクライナのロシア軍

 ロシアのウクライナ侵攻の様子を見ていると、77年前と似ているような気がする。一つにはソ連軍の民間人に対する攻撃、二つ目は当時とは逆になるが、独裁者と軍人の関係が(ヒットラーロンメルのように)末期のナチスドイツに似ているように感じる。

 北朝鮮贔屓のブルース・カミングスでさえも次のように書いている。

 「しかし、占領当初のソ連軍には別の側面があり、占領の記録に著しい汚点を残している。朝鮮に入ってきたソ連軍は、日本人や朝鮮人にたいし強姦や略奪をふくむ蛮行をはたらき、しかもこれは広範囲に及んだと思われるだけでなく、敵である日本人やその手先の朝鮮人にたいする復讐の域を大幅に超えるものであった。ヨーロッパの戦争でソ連の若い世代全体が徹底的に破滅させられた結果、ソ連は日本との戦いのためだけに、若い農民男女を兵士として採用せざるを得なかった。こうした新兵たちは時には制服や靴もなしに朝鮮にやってきて、支給される軍糧もないまま朝鮮人の土地に寄食し、必要なものを金も払わずに取り上げ、東ヨーロッパ、とくにドイツに行ったソ連兵と同様、各人が奪い取った略奪品を本国に送ることも許されていた。ソ連の占領下で最初の数週間、平壌の市長をつとめた韓根祚(ハングンジョ)によれば、人民委員会が備蓄しておいた配給用食糧の三分の二をロシア人が徴用したという。」「一九四六年一月にはソ連憲兵隊(MP)を導入し、部隊を厳しく監督するようになった。朝鮮人を強姦したロシア人はその場でMPに射殺されることになったのである。ベネディクト修道会に所属するドイツ人のホップル神父は、一九四五年から四九年まで北朝鮮に住んでいたが、最初のソ連占領軍は中国からの難民と同じくらいみじめな様子で、着るものも食べるものもない有様だったと語っている。彼等は「いたる所で暴力を振るい、略奪をはたらいた」が、しかしMPの到着後は事態は収まり、その後の「ソ連当局者の振舞いは……つねに穏当であった」し、部隊も厳しい統制下におかれた。」(『朝鮮戦争の起源』第3部第11章)

 北朝鮮ではソ連軍進駐以来、五ヶ月間は無法状態であったことが分かる。満州でも同じことで、葛根廟の悲劇など恐ろしいことが限りなくあった。

 今、ロシア軍が民間人への無差別攻撃に出ていることは明らかなようだ。ロシア占領下では反ロシア的ウクライナ人にどんな制裁が行われるか分からない。

 

 また、ウクライナとロシアの双方が相手をナチス呼ばわりしているが、これはその指摘が(特にヨーロッパにおいては)いかに自己正当化の切り札になるかを示している。黄門様の印籠だ。しかし、こう多用され続けて、お前もあいつもみんなナチスだ、みんなナチスと変わらない残虐行為をしているじゃないか、と言い出したら印籠の値打ちも下がるだろう。

 ロシアの方が強力な独裁者を仰いでいて、将軍たちもイエスしか言えないようだ。これではロンメル将軍に自殺を強いたヒットラーのドイツと同じ末路になるような感じである。友好国、同盟国の少ないところも似ている。ドイツと違ってロシアには資源があるが…。ヒットラーは最後まで暗殺されなかったが自殺し、国も滅びた。現代の独裁者は、いかに強権であろうと、かつての皇帝にはなれないと知るべきだろう。