小説 トホホの海 鳥海高校、僕らの演劇革命

 著者、大原 螢  発行、書肆犀  平成25年1月15日初版第1刷発行
 芸術集団東北幻野主宰で新庄南高校演劇部顧問だった渡部泰山先生のお書きになった小説。
 
 「鳥海高校」という非実在の高校(ただしモデルとなった高校は明確に分かる)に教頭として赴任した篠田(もちろん渡部先生がモデル)が、「最底辺校」の生徒たちに学校特別行事として演劇の上演をさせ、悪戦苦闘の末に学校・地域を巻きこんで成功するという感動の物語。
 一気に読み終えた。面白い。ちょっとカッコ良すぎるかもしれない。自分の前任校での小さな体験も重ね合わされて読めた。
 高校の演劇といっても大会に参加するわけではない。募集定員を満たせない学校の、存亡をかけた企てである。学校生活になんの目的も見いだせない生徒たちに、何かに一生懸命に取り組む経験を持たせたい。現実の前に無気力になっている教員たちにも、同僚意識を持って教育力を発揮してもらいたい。そんな教頭の思いが綴られる。小説とは銘打っているが、10年ほど前に2年間教頭を務められた間のほぼ実体験であろうことは容易に想像できる。
 高校演劇部顧問として日々生徒と向き合っていることにどんな教育的意味合いがあるか、すごく納得される「小説」である。